人と地域と資料の繋がりのために
修復は、資料保存の最終段階の行動です。それまでにできることをできるだけ多くの方々に知って頂きたいと私たちは考えています。工房レストアでは、修復・保存技術をより多くの方々に知って活用して頂ける場と、資料本来の価値に新しく気付ける場を作るため、様々な取組みを行っています。その一部をご紹介します。
出張ワークショップ
工房レストアでは各自治体、教育委員会、大学、博物館、文書館、図書館、資料館等主催者様と連携して出張ワークショップを行っています。
紙資料に触れる機会を作り、資料の取り扱いや保存方法、環境整備等をワークショップを通して広め、地域の文化を継承していく機会を作ることが目的です。
過去の開催情報の詳細はブログをご覧ください。
修復作業の見学、参加
次世代に伝える
修復を通じて所有者様と資料のつながりをより一層深め、次世代に伝えていく きっかけになればと、ご依頼主に修復作業に立ち会い参加して頂く取り組みも始めました。
今回ご協力頂いたMさんには表具の裂地を選んで頂き、掛軸を仕立てる作業に参加して頂きました。
この掛軸はMさんの奥様の実家で法事の前夜に行う、お看経(オカンキ)という行事に使用されているそうです。村の方々が代々伝え大事に取り扱ってきましたが、痛みが激しくなり使用が困難になりました。捨てるか新しい物に代えるか検討された結果、修復をして残すことになりました。
掛軸に使用する裂地について打ち合わせしています。掛軸の形に仕立てる付け廻(まわ)し作業を体験してもらっています。
Mさん「自分自身が手を加えることで、資料(作品)に対する見方が明らかに変わりました。」今まで地域のものでしかなかった掛軸ですが、Mさん自身が手を加えたことでそれがより身近なものに感じられるようになったそうです。
修復報告会
私達は修復頂いた資料を通じて、そこから知ることができる地域の文化・歴史を皆で共有し、「先人達の思いに触れられる宝物」として皆で資料を未来に向けて活用できるきっかけ作りを行っています。
その一環として修復報告会を開催致しました。
とある町会より、「寄り合いに使っていた旧神社から涅槃図掛軸が出てきた。ボロボロになって忍びない」と、修復のご依頼がありました。修復費用は町会費で賄うと伺いましたので、町会長様の許可を頂き、集会の折に修復報告会をさせて頂くことになりました。
当日、町内会館には大勢の町民の方々にお集まり頂きました。
費用に対するご説明として、修復工程から掛軸の仕立ての説明、取り扱い、保管方法を皆様にご説明した後、事前に当地域の学芸員から頂いていた解説文にて、涅槃図自体の解説も行いました。
参加者の方々はなぜ旧神社に涅槃図が伝わったのかを知ることができ、また涅槃図の意味も知ったので、これをきっかけに涅槃会も開きたいと仰っていました。
このような形で、地域の文化資料を残し、未来に向けて資料を伝えていくことの意義を感じて頂けるような活動を今後も行って生きたいと考えています。