「修復前は開くだけで怖かったんですが、
これで安心して掛けることができ喜ばしく思っております」
埼玉県の常徳院 神田様より掛軸の修復をご依頼頂きました。
ご感想を頂戴しましたので、修復工程とともにご紹介させて頂きます。
掛軸 涅槃図
修復前
修復後
修復方法
- 現状記録と写真撮影を行った後、軸木、表装裂などを取り外して本紙のみの状態にしドライクリーニングで表面上の汚れを落としました。続いてドーサ液(ミョウバン溶液に膠を溶かしたもの)を塗布し滲み止めを行ない、浄水で洗って繊維内に入り込んだ汚れを落としました。
- 顔料・和紙が剥がれ落ちやすい状態のため養生用に表打ちを行った後、古い総裏・増裏・肌裏打ち紙を順番に除去し、新たに薄口の美濃紙にて本紙の肌裏打ちを行いました。その後表打ち紙を外して十分に乾燥させました。
- 本紙の折れが発生している箇所に極薄の美濃紙の帯を貼り(折れ伏せ)、補強しました。欠損個所は地の色に合わせて補彩しました。
- 新しい正絹の表装裂を本紙に付け廻しました。
- 薄口の美須紙にて増し裏打ち、中肉の美須紙にて中裏打ちを行った後、仕上がりサイズに折って、袋(掛軸の軸棒と裂を繋ぎ固定する紙)を付けました。その後薄口の宇田紙にて総裏打ちを行いました。
- 乾燥後、余分な和紙を断ち八双・軸木・風帯・紐を付け、検品後に写真撮影をし、納品いたしました。
ご感想
こちらは250年前から伝わる涅槃図の掛軸です。お釈迦様のお弟子であられる阿難陀尊者様が大変美男子に描かれており非常に気に入っておりましたが、開くとポロポロと紙が落ちてくる状態で、開くだけで怖い状態でしたので工房レストアさんに修復をお願いしました。これで安心して掛けることができ、喜ばしく思っております。今後は坐禅会等でお檀家さん・参禅者の皆様にこの涅槃図をご覧いただき、お釈迦様の姿をご説明していきたいと思っております。