レプリカ製作を通じて貴重な資料を活用されているお客様の事例を活用の方法や資料に対する思いとあわせてご紹介します。
かほく市立宇ノ気小学校 様
西田幾多郎の精神を次世代につなぐために
石川県かほく市立宇ノ気小学校の笹山明夫校長からのご依頼で、西田幾多郎書掛軸のレプリカを製作させて頂きました。
この掛軸は、石川県西田幾多郎記念哲学館(以下哲学館)の所蔵品で以前展示に使用するためレプリカを製作させて頂いたものです。今回はその製作時のデータを使用して、もう一点宇ノ気小学校用に製作させて頂きました。
何故、レプリカを製作しようと思ったのか、西田幾多郎と小学校、哲学館との関わりとともに笹山校長先生にお話を伺いました。
(所属・肩書はインタビュー当時のものです 令和6年3月)
哲学者 西田幾多郎
西田幾多郎は、明治3年に現在の石川県かほく市に生まれ、世界的にも著名な哲学者です。「善の研究」など多数の著作を遺しています。
京都の観光名所として知られる「哲学の道」は、西田幾多郎が京都大学で教鞭をとっている時期にこの道を思索に耽りながら歩いていたことが由来となっています。
時が流れると、社会や状勢の変化により伝えられてきたことも少しずつ変わり、場合によっては、遠い過去のこととして記憶が薄れてしまいがちです。 |
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西田先生は、書について「我々の生命の本質としてのリズムを表現する芸術」として捉えた言葉を残しています。 |
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特に「人は人 吾はわれ也 とにかくに…」の歌は、西田先生の確固たる信念を表しているもので、「哲学の道」にある歌碑にも刻まれています。寸心読本にも紹介されていて、暗唱できる子どももいるほど本校ではよく知られています。 |
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今から85年前の昭和13年10月8日、本校を訪問された西田先生は、校訓である「誠実勤勉」を大切にしながら生活するようにと子どもたちに話をされました。「誠実」とは、嘘をつかず相手の身になって行動することであり、「勤勉」とは、学び続けるということです。 |
資料活用とレプリカの意義
世界的哲学者 西田幾多郎とその思想と思索の歩みに触れてもらう場としての哲学館。
西田幾多郎の母校にして、生み出した哲学を受け継ぎつないでいく世代を育む宇ノ気小学校。
専門機関と地域がともに同じ思いをつなぐ形のあらわれとして今回のレプリカの意義があると感じました。博物館と地域が密接に関わり、伝えられてきた想いを次の世代に伝えるために協力して史料を活用するという理想的な姿を見せて頂きました。
弊社がそれに少しでも携わらせて頂けました事に本当にありがたく思います。
最後ではありますが、大変お忙しい中でご対応してくださった笹山校長先生をはじめ宇ノ気小学校の皆さま、西田幾多郎記念哲学館の学芸員の皆さまには心より感謝申し上げます。