「漉き填め(すきはめ)」とは紙漉きの流し漉きの技法を取り入れた修復技法で、修復する資料に資料と同質の紙原料液を流し込み、虫喰い・破れなどの欠損した箇所にのみ新しく同質の紙を形成して修復する技法です。裏打ちや手直しなどの従来の修復方法ではなしえなかった様々な特長があります。
漉き填めの特長
- 資料を傷つけず、色合い・手触り・風合いも損なわない可逆性のある修復方法です。
- これまで高度な技術とコストが必要とされていた破損のひどい作品や両面に文字が書かれた資料の修復、酸性劣化のひどい洋紙等の修復が低コストで可能です。
- 大きなサイズから小さなサイズ極薄から極厚のものまで、風合いを損ねる事無く様々な資料に対応できます。
- 従来の裏打ち修復では必ず表面に段差がありましたが、この段差が全くなくフラットに仕上がります。
※インク・スタンプは滲む危険性が高いのですが、滲み止め処理や速乾式の脱酸処理を施すことによって、その危険性を減らすことができます。
漉き填めの溶液
漉きはめに使う溶液は、国産の最高級品質の楮、雁皮等の原料を使い自社で生産します。そのため資料にあわせた細かい調合が可能です。また和紙以外のパルプや竹紙などの、あらゆる紙質の資料にも対応できます。
漉き填めの実例
(1)本紙をレーヨン紙ごと持って漉き填め用の漉き簾(すきす)の上に置き、刷毛を使って本紙を漉き簾に密着させます。
(2)漉き填め機にセットします。
(3)大切な資料がにじんだりしないように事前に滲み止め処理を行った後、資料の上から同質の紙原料液を全体に流し込み、欠損部分に入らなかった原料を吸引します。
原料は欠損部分のみに残りますので、両面に文字や絵がある資料でも隠れてしまうことなく修復することができます。
(4)漉き填めが終わったら残った余分な水分を吸引し、干し台に置いて自然乾燥させます。
漉き填め後
資料表面に被ることなく欠損部と周辺部に新しい紙が形成されています。
資料保護のために一回りサイズを大きくすることもできます。